長く愛着をもてる家って、どんなすまいなのでしょう。
風通しがよくって、明るくて、居心地がよくて、安心感をもてて,などなど数え上げれば、多様な場所と様々な文化がある中で答えは無限に拡散していくようにも思えます。そんな中で私たちは、なるべくならデザイナーとして独りよがりな姿勢は避けたいと願ってすまいを提案しています。誰しもが、新しく建てられたすまいを、我が子の誕生のようにその存在をまるごと承認するかのごとく、自然でさり気ないたたずまいをすまいに与えることができたならと切望します。
それでは、赤ん坊が皆から惜しみなく愛されるのはなぜなのでしょうか。愛くるしい笑顔だから?数々の理由を並べてみても言い尽すことはないことでしょう。ただひとつ確かなことは、赤ん坊はまわりの環境を映し出す鏡だということです。生後一時間に満たない新生児が大人の顔真似をしたという報告もあるようです。赤ん坊は絶対的な自立した存在ではなく、自分を含めた周囲の状況を身体的に受け入れそのまま相手に投げ返し、そこにある関係性をそのままかたちとして定位しています。私たちは生まれてきて間もない赤ん坊を前にして、自らの投影だとは気づかないまま、人類が歩んできた時間の厚みを逆説的に感じているように思えます。
量の不足が決してあるわけでもないこの国で、それでも住宅に価値があるのだとしたら、私たちはすまいづくりを通して、太古の人類も同じように目の当たりにした家のかたちが立ち上がる風景に出会い、そこで育まれる生活とともにすまいの成長を愛をもって見続けるからかもしれません。
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