東急自由が丘駅から徒歩10分ほどの緑ヶ丘という街に、yumiko iihoshi porcelain という名のアトリエ兼ショップがあります。ここで6/11~ 6/19まで磁器作家のイイホシユミコさんの作品展が開かれています。
手作りとプロダクトの境界にある作品を作りたいというイイホシさんの姿勢は、わたしたちが所属しているスターディ・スタイルの、設計事務所とハウスメーカーの間にある住まいづくりのスタンスにも共鳴するところが多々あるように感じていました。
その凛とした圧倒的な空気感を発する磁器作品には、鎌倉のオクシモロンというカレー屋さんやスパイラルマーケットといった雑貨屋さんで何度か出会ってはいました。それらは基本的に大量生産を前提としたプロダクト作品でしたが、今回の展示会では、はじめて手作りの作品をみることができました。一品物のデザインがえてして作家性という手垢を作品に残してしまったり、効率やつくり手の利益を優先したプロダクトが使い手に長く愛されなかったりすることへの違和感が創作の原点にあるのだそうです。
その時代の流行や特定の理念にこだわるのではなく、そこに立ち上がる生活のシーンを名づけることをきっかけとして作品が生まれるとも聞きます。今回印象にもっとも残った作品は「冬の日」という名の、縁に放射状の模様が入っている懐の深いスープ皿です。上質な小説や映画がもつ自立した世界観がそこには確かにありました。
今回の展示会名でもあるdaily wareという名の器を妻は購入しました。今わが家のチェストの上にあるのですが、これが驚くことに自宅で眺めたほうがお店で見たときよりよく見えるのです。普段住まいの設計をしているなかで注意するのは、たいていショウルームで見たときにいいなと思って実際使ってみても、なかなかお店で見た印象にはならないことです。販売側の定着させているイメージは実際にそのまま個別の住まいにあてはまらないからなのですが、想像力を働かせて姿かたちのまだないシーンを思い描くことはなかなか難しいようです。
この展示会のためのポストカードにこんな内容のメッセージがありました。人の想いが浮かび上がるように食器だけを展示することが多かったのが、震災後食事をすることのかけがえのなさを感じ、うつわにまつわるものも含めて今回は提案したそうです。
日々人々が何気なく繰り広げている日常の行為の積み重ねが互いを理解する手助けになるという確信を強く感じる展示でした。
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